日本における“空き家1円”の魅力と現実——購入プロセスとリアルな事例
日本では、空き家が「1円」で売られるケースが存在することをご存じでしょうか? 一見ミステリアスなこの価格設定には、人や地域の事情、そして社会的課題が垣間見えます。

なぜ“1円空き家”が出現するのか?
背景にはさまざまな事情が絡んでいます:
所有の負担から解放されたい
空き家を持つことで発生する固定資産税、都市計画税、光熱費、保険料、庭木の管理などの維持費は、年間で約30万円以上にもなることがあります。
加えて、もし放置すると老朽化が進み、最終的には150万〜200万円の解体費が必要な場合も。これらの負担を回避するために、たとえ「1円」でも「売ってしまいたい」所有者がいるわけです。空き家が急増している社会問題
総務省の統計によれば、日本の空き家数は約848万戸、空き家率は13.6%にも達しており、今後も増加が見込まれています。“負動産”化リスク
再建築不可物件や相続問題、共有持分など、法的・物理的な制約により売却が困難な“負動産”としての空き家も多く、1円や引き取り費用込みで譲渡されるケースもあります。
どうやって「1円物件」を買うのか?
主な購入ルートとポイント:
空き家バンクを通じた購入
自治体や民間が運営する「空き家バンク」には、格安で掲載される物件もあり、1円物件も含まれることがあります。不動産業者が介在するケース
1円で売ることで話題性を呼び、問い合わせを増やす宣伝効果を狙って掲載する不動産業者もいます。
しかし、物件にはシロアリや雨漏りといった瑕疵が潜んでいる可能性もあるため、購入には「築年数」「補修履歴」「不動産会社のノウハウと実績」の確認が求められます。税務・登記の注意点
非常に低価格の譲渡になるため、「低額譲渡」に該当し、贈与や譲渡所得の税務上問題になることもあります。専門家への相談が推奨されます。

リアルな事例:1円で購入し、成功に転じたケース
“地方の格安空き家を“優良物件”へ再生した事例:
福岡県飯塚市の8LDK空き家
投資家・永野彰一氏は、1円物件を購入後、修繕・活用を行い、1年半後には420万円で売却した例があります。「1円・引き取り代あり」で取得し資産化した事例
永野氏は、空き家だけでなく、山林や島など、“負動産”を1円、または引き取り費用をもらいつつ取得し、DIY・専門家連携で賃貸、駐車場化、送電塔使用料など、多様な運用方法を見出しています。
まとめ:1円物件購入のメリットとリスク
メリット | リスク/注意点 |
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購入費用が極端に安い | 瑕疵や構造的欠陥がある可能性高、修繕費用がかさむ |
維持負担を逃れられる | 固定資産税や解体費の回避効果あり |
再生や投資として価値化の余地あり | 購入前後の税務や登記相談が必要 |
地域活性化やユニークな活用が可能 | 情報取得は「空き家バンク」や信頼できる不動産業者からが安心 |
締めくくりに
「1円で空き家を買う」という情報は、思わず耳を引く魅力がありますが、その背景には所有者の負担や社会課題、そして購入後の活用で価値を見出す可能性とリスクが交錯しています。
購入を検討する際は、専門家との税務相談や補修費用の見積もりを行い、慎重に判断することが重要です。