慢性疾患の自己管理:高齢者のためのよくある病気の予防と対策ハンドブック

## 加齢に伴い、身体機能は徐々に低下し、高齢者は慢性疾患を発症しやすい傾向にあります。高血圧、糖尿病、心血管疾患、骨粗鬆症などの慢性疾患は、高齢者の生活の質を損なうだけでなく、寿命を縮める可能性もあります。しかし、積極的かつ主体的な自己管理を行うことで、高齢者は病状の進行を効果的に抑制し、合併症の発症を遅らせ、健康で幸福な晩年を送ることができます。

日本の主要な慢性疾患とその危険性
1. 高血圧(Hypertension)
日本では 約1,609万人 が高血圧と推定されており(生活習慣病調査サイト)、75歳以上では60%以上が該当します。
原因のひとつが 食塩の過剰摂取 であり、2023年の国民健康・栄養調査によると、1日あたりの平均食塩摂取量は 男性10.7g、女性9.1g、全体平均で9.8gに達しています。
これは、厚生労働省が推奨する1日6g未満を大きく上回っています。
血圧の管理目標としては、家庭血圧で 135/85 mmHg未満 が望ましいとされています。
2. 糖尿病(Diabetes Mellitus)
日本では糖尿病が強く疑われる成人が 約1,000万人、加えて予備軍が 約1,000万人 存在します(ゆたか倶楽部)。
70歳以上の男性では 26.4%、女性では 19.6% が罹患しています。
糖尿病は心疾患や腎障害などの 重篤な合併症 を引き起こす危険性があり、HbA1c(ヘモグロビンA1c)の目標値は 7.0%未満 とされています(日本糖尿病学会)。
HbA1cが7.9%を超えると、腎不全や神経障害のリスクが大幅に高まるという報告もあります(とさき糖尿病内科クリニック)。
3. 心血管疾患(Cardiovascular Disease)
日本における虚血性心疾患の患者数は 約173万人 とされており(生活習慣病調査サイト)、
先進医療機器の活用により死亡率は中国の約1/5とされています。
特に OCT(光干渉断層計) や 生体吸収型ステント の普及率が 80% を超えており、治療効果の向上に寄与しています。
政府の「健康日本21」計画では、心血管リスクの軽減を目的に、 食塩摂取量を6g/日未満 に抑えることが推進されています(厚生労働省)。
4. 骨粗鬆症(Osteoporosis)
骨粗鬆症の推定患者数は 約1,590万人 で、女性が 1,180万人、男性が 410万人 を占めています(ナルオ整形外科)。
加齢に伴う 骨密度の低下 により、大腿骨頸部の骨折リスクが上昇します。
治療には デノスマブ(Denosumab) などの生物学的製剤が用いられ、継続投与により骨折リスクを 最大62%抑制 できると報告されています。
厚生労働省は、「 骨密度測定+栄養指導+転倒予防 」の3点を基本とした予防プログラムを提唱しています(厚労省資料)。
5. 老年衰弱(フレイル,Frailty)
フレイルは健康から要介護状態への 中間段階であり可逆性がある ことが特徴で、早期介入によって生活機能の維持が可能です。
東京大学の研究によれば、 口腔機能が低下 している高齢者は、要介護リスクが 2.35倍、死亡率が 2.09倍 高くなると報告されています(厚生労働省広報誌)。
そのため、予防には「 栄養・運動・社会参加 」の三本柱が効果的であり、東京都なども具体的な施策を展開しています(東京都福祉局)。

自己管理、「心」から始める:生活習慣の基礎
バランスの取れた食事
低塩分・低脂肪・低糖質の原則
食物繊維、ビタミン、ミネラルの摂取を重視
野菜・果物・全粒穀物を積極的に
赤身肉・加工肉の摂取は控える
規則的な運動
ウォーキング、太極拳、水泳など低強度運動を選ぶ
毎週150分の中程度有酸素運動、または75分の高強度運動
運動前に医師の確認を
禁煙と節酒
喫煙はあらゆる慢性疾患のリスク因子
飲酒は可能な限り控える、または適量を守る
楽観的な気持ちとストレス管理
趣味や社会活動でストレスを解消
積極的で前向きな姿勢を維持する
十分な睡眠
規則正しい生活リズムを確立
夜更かしを避け、快適な睡眠環境を整える
モニタリングとフォローアップ:病状の動向を把握する
血圧測定:自宅での記録を習慣化
血糖値測定:空腹時血糖値・食後血糖・HbA1cなど
体重管理:BMI24未満を目安に維持
定期健診:自覚症状がなくても年に1回は健康診断
服薬指導:安全かつ効果的に
処方通りに服用:用量・時間を守る
副作用の理解:異常があればすぐ医師へ
相互作用に注意:他の薬と合わせて服用する際は医師に相談
薬の保管:涼しく乾燥した場所、子供の手の届かない所に

積極的に参加し、共に立ち向かう:サポートシステムの力
家族の支援:理解と励ましが継続の力に
患者同士の支え合い:コミュニティや患者会への参加
結びに:健康の第一責任者は「あなた自身」
慢性疾患は完全に治るとは限りませんが、主体的な自己管理により、進行を抑制し生活の質を大きく向上させることが可能です。自らの健康を守る第一歩を、今日から始めましょう。