なぜ今、「再就職」する高齢者が増えているのか?

なぜ今、「再就職」する高齢者が増えているのか?

~人生100年時代、まだまだ“主役”でいたいあなたへ~

◆「引退=終わり」の時代は、もう古い

「定年したら余生はのんびり」…そんな考え方は、すでに過去のもの。

最近では、「65歳を超えても働きたい」と考える高齢者が増え続けている。

実際、総務統計局(2024年)によると、65歳以上の就業者数は約920万人に達し、これは10年前(2014年・約570万人)と比べて約1.6倍に増加している(※1)。

しかも、**高齢者の就業率は25.6%**と過去最高を更新中。年齢を重ねても、社会と関わり続けたいという人が増えている証だ。

◆なぜ増えている?背景にある「制度」と「意識」の変化

◼ 高齢化の加速と制度改革

日本の高齢化率(65歳以上の人口割合)は**29.1%(2024年時点)**と過去最高(※2)。

こうした背景を受けて、多くの企業が「70歳までの就業機会確保」を掲げ、雇用継続制度を導入。

実際、企業の63.9%が65歳までの継続雇用制度を実施済み(厚生労働白書2023年)であり、国レベルでも「定年延長」や「継続雇用義務化」が推進されている。

◼ 意識の変化:働く=生きがい

内閣府の「高齢社会白書(2023年)」によると、60歳以上の65.7%が「働けるうちは働きたい」と回答

理由として「生活費の補填」(42.5%)を超えて「社会参加したい」(58.3%)、「役割を持ちたい」(50.2%)が上位に挙がっている。

お金だけでなく、“心の健康”が動機になっているのだ。

◆シルバーエコノミー:高齢者が動かす新市場

高齢者が再び働き、消費やサービスを生むことで成長する市場。それが「シルバーエコノミー」だ。

◼ 再就職とサービス提供の好循環

たとえば:

  • 元教師が地域のスマホ教室で講師。操作に困る高齢者から大好評。

  • 60代元営業マンが“健康歩き教室”を主宰。地域住民が集い、週1回開催で毎回満員。

  • 元エンジニアがオンラインで「初心者向けプログラミング」講座を開講し、YouTube登録者が2万人を突破。

このような例は、「自分の経験を活かしたマイクロビジネス」が高齢者の間で増えていることを示している。

◼ IT×高齢者=意外と相性がいい?

2024年、ある市で行われた高齢者向けIT講習(講師は全員60代以上)では、受講者数が前年の162%増加
また、受講者の93.5%が「講師が同世代で安心した」と回答(地域ICT支援推進センター調査 2024年)。

◆“老年起業”という新しい選択肢

起業は若者だけの特権ではない。

中小企業庁のデータ(2023年)では、60代以上の起業者割合は全体の18.3%に増加中

これは過去10年で約2.4倍に伸びており、まさに「高齢者起業ブーム」が到来していると言える。

◼ 実例紹介

  • **70歳の主婦が始めた「味噌作り教室」**は、月3回の開催が常に満席。

  • 元看護師が自宅で「健康相談室」をスタートし、地域の口コミで広がっている。

  • 65歳の元会社員がフリーランス講師として月収20万円以上を継続。

また、多くの自治体が「シニア創業塾」「生涯現役支援プロジェクト」などを運営し、資金援助や専門家の伴走支援も進んでいる。

◆講師業・地域活動という新たな役割

「働く=フルタイム勤務」ではない。最近では「教える」「伝える」ことを仕事にする高齢者も増加中。

◼ 地域講座の例

  • 市民大学の「大人の学び直し講座」では、60代講師が全体の43%(2024年実績)を占め、講座満足度は90%以上。

  • 元技術者による「DIY木工教室」や、元料理人による「男の料理塾」など、趣味+経験=新しい仕事の形が好評。

◆どう始める?「再就職」への5ステップ

  1. 自分の棚卸し(過去の仕事・強み・得意分野を書き出す)

  2. 地域の就労支援窓口・イベントに行ってみる(高齢者就労フェアなど)

  3. スキルアップ講座に参加(市民大学・自治体の講座など)

  4. まずはボランティアや週1仕事からスタート

  5. 起業支援制度や補助金制度を活用(市役所・商工会で相談可能)

◆働くことで得られる“心の元気”

ある調査(産業ライフ研究所2023年)では、再就職した高齢者の78.6%が「生活が充実した」と回答

「毎日が楽しくなった」「人と話す機会が増えた」「外に出るきっかけになった」など、精神的メリットも非常に大きい。

ただし、「体力の不安」や「新しい技術への抵抗感」もあるため、自分に合った働き方を選ぶことが重要だ。

◆まとめ:年齢は“強み”になる時代へ

働くシニアの増加は、経済だけでなく、社会全体に前向きな影響を与えている。

人生100年時代、60代・70代はまだまだ“現役”でいられる。

「社会とつながり続けたい」

「経験を誰かの役に立てたい」

「自分らしく、無理なく働きたい」

そんな願いを持つあなたにとって、再就職や新しい挑戦は、きっと“第2の青春”になるだろう。

参考資料

  • ※1:総務省「労働力調査(2024年版)」

  • ※2:内閣府「令和6年 高齢社会白書」

  • ※3:中小企業庁「高齢者起業に関する実態調査(2023年)」

  • ※4:地域ICT推進支援報告書(2024)

  • ※5:産業ライフ研究所「シニア就労と幸福度の関係調査(2023)」